この前に引き続き、アメリカ大統領選挙に関する話題です。
（基本的な大統領選挙の仕組みは"アメリカ大統領選挙の仕組み"をどうぞ）

皆さんもご存知のように、大統領候補として、ジョージ・W・ブッシュ現大統領（共）、ジョン・ケリー上院議員（民）が立候補し、しのぎを削っています。

しかし候補は他にもいます。しかし、当選の確率は限りなくゼロに近いので立候補者がいることすら話題になりません。ある一人の候補を除いては…。

その候補はRalph Nader（ラルフ・ネーダー）氏です。
ネーダーは今回無所属として立候補しています。
前回の大統領選でも立候補しており、大きな影響を及ぼしました（前回は緑の党の候補として立候補）。そして今回も大きな影響力を持つと言われています。

では限りなく当選確率がゼロに近い候補がなぜ影響力を持つのか？
それは今回の大統領選が大混戦だからです。

確かにネーダーに投票する人の数はブッシュやケリーにいれる人に比べたら些細なものです。
しかし、今回は大混戦なのです。文字通りすべての1票が重要なのです。
前回も解説したように前回の選挙でフロリダ州ではゴアとブッシュの差はたったの537票でした。
フロリダ州でネーダーに投票した人は97,488人。そのうちの538人、たったの0.55％の人がゴアに入れていたら、今我々はゴア大統領を目撃していたわけです。

でも影響力は共和、民主両陣営にあるのだから、別にネーダーに影響力はないのでは？
と思われますが、はっきり言って両陣営に与える影響力には大きな差があります。

というのは民主党候補、今回で言えばケリーとネーダーのどちらに入れるか迷う人はいても、ネーダーと共和党候補、ブッシュのどちらに入れるか迷う人は少ないと容易に考えられるからです。

この3者の政策を見ると、3者とも違いますが、その政策の距離は

ブッシュ　　　　　ケリー　　　　　　　ネーダー

のようにネーダー、ブッシュ間よりもケリー、ネーダー間のほうが近いわけです。

というわけで、ケリーを支持する人々は自分たちに政策が近いにもかかわらず、ネーダーは自分たちの邪魔をしていると感じているようです。

今回の選挙ではブッシュか反ブッシュかと真っ二つに割れていますから、"ブッシュをどうしても倒さなければならない"という意識が強い人が多く、前回はネーダーに入れたし、ネーダーを支持するが、ブッシュを倒すためにケリーに入れると公言している人も多くいます。（ボクの友人もその一人）

またクリントン時代にクリントンは共和党員だと批判していたマイケル・ムーア（華氏911の監督）も昔から付き合いのあるネーダーに立候補を取り下げるように説得しています。

しかしネーダーから見ると"共和党も民主党も同じ"だそうで、立候補を取り下げる意志はまったくないようです。それにブッシュが勝ってしまうかもしれないが、それでもネーダーに入れる人は少なくないようです。

そのためケリー陣営は相手のブッシュ陣営のみならず、当選する見込みがまったくないネーダー陣営にも神経をとがらせなければならなくなっているわけです。

一方ブッシュ陣営はネーダーが多く票を集めてくれたほうが自分に有利になります。ケリーへの票がネーダーに流れることはあっても、自分への票がネーダーに流れることはほとんどないと考えられるからです。

そのため共和党はネーダーが立候補するために必要な署名を集める運動を手助けもしました。
政策がまったく違う候補の署名運動の手助けをしたわけです。

さて、一部からは"大統領選ハイジャック犯"とまで呼ばれるネーダー氏。
今回はどれだけの票を集め、どのような影響を及ぼすのでしょうか？

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